2011年5月21日土曜日

至妙なる名機 ミノルタCLE

 30年前に発売されたミノルタCLEは、CLとは違い独自の「立ち位置」により高い評価を得ていた。独自というのは、レンジファインダーカメラとして初めてAE(自動露出)を実現したことから来ている。写真のようにシャッター幕にランダムパターンを印刷し、フィルムとほぼ等しい反射率を持たせ、その反射光を測光することでAEを達実現している。CLのように測光素子がメカニカルに回転する機構が無く、タイムラグの無い合理的なシステムである。このダイレクト測光がミノルタの特許であることはあまり知られていない。オリンパスのOM-2に最初に搭載されたので、みんなO社の特許だと思っていたのだ。
 一方CLEがCLに較べて巧妙だと思ったのは、当時同じ時期に商品化されていた普及機・ミノルタXG-Eから多くのパーツが流用されていたことだ。VE設計(Value Engineering)というヤツである。高級レンジファインダーカメラにもコストダウンを行うあたり、非常にミノルタらしいと思ってしまった。外装で唯一特筆できるのは、黒塗装ではなく黒クロームメッキであることである。私の記憶ではこの黒クロームメッキを採用しているのはライカ以外ではライツミノルタCL、CLE、ミノルタXD、XD-Sくらいである。ライツとの技術提携によって得た貴重な技術だ。メッキならではの非常に深い艶がでていて、これはいくら塗装を多層塗りしても敵わない。最近のデジタル一眼レフではどの機種もプロット塗装(ブツブツの付いた塗装)で深みを出そうとしているが、繊細感が無く私はあまり好きではない。メッキは環境問題もあるのでそのままでは復刻できないだろうが、代替となる加飾技術が望まれている。
 このカメラが発売されたとき私は高校卒業前だったが、その約4年後この会社にお世話になるとは全く想像すらしなかったのである。